極上の担々麺&本格ちゃんこ鍋來來

No.26
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路地裏の台湾料理店で見つけた
極上の担々麺&本格ちゃんこ鍋
そして「威圧感のある大男」

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JR高崎駅西口から歩いて20分ほどの「柳川町」。かつては群馬有数の歓楽街として栄えたエリアですが、時代の流れとともに来訪者が激減し、お店の数も減少の一途をたどっていきました。しかし捨てる神あれば拾う神ありといったところでしょうか。縦横無尽に細い路地が張り巡らされ、昭和の香りが色濃く残る風景に注目が集まり、最近では映画やドラマのロケ地として人気を集めているそうです。そんな柳川町を30年にわたって見守り続けてきたのが、今回訪れる台湾料理店「來來」。台湾料理はどれも絶品ながらも、推定身長190センチ超の大男の店員が、黙々と鍋をつくったり、料理を運んだりしていて、一部の客からは「妙に威圧感がある」「決して食い逃げはできない店」との声も。もう調査待ったなしのお店と認定させていただきました!

(取材/絶メシ調査隊 ライター名/吉田大)

写真ライター吉田

「路地裏からごきげんよう、絶メシ調査隊の吉田でございます。今回訪れたのはかつて高崎一の花街として栄えた柳川町であります。そしてここの路地裏、最高すぎます。映画やドラマのロケ地として人気だというのも頷けるほど、味わい深い風景です」

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このエリア一帯がとっても絵になる。インスタグンマー(※)のみなさん、ここの路地裏、最&高っすよ! ※群馬を愛するインスタグラマーのこと

そしてこちら左手に見えるのが今回のターゲット「來來」さん。

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「高崎電気館ビル」の真ん前の路地に入ってすぐ。黄色い看板が目印

柳川の酔客、そして最近では映画関係者にも愛されているという台湾料理の名店だそうです。これは期待が高まります。そして噂の「190センチ超の大男」の存在も気になるところです。それではお店に入ってみましょう。

料理店未経験ながら
オープン当初から大繁盛

來來のご主人である永井誠彌さんは今年76歳。台湾出身であり料理上手だった奥様の腕を見込んで、およそ30年前にこの地に台湾料理店をオープンしました。驚くことに夫妻は、それまで料理店で働いた経験はナシ。直前まで、高崎競馬場近くで5年ほどスナックを経営しており、スナックから突如、台湾料理店を始めることになったといいます。

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ご主人の永井誠彌さん。口ひげがダンディな紳士

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「30年前ということは45歳ですよね?未経験でいきなり台湾料理店をオープンするってなかなかの決断だと思うのですが」

写真永井さん

「知っている人から『柳川町でお店をやったら?』って言われてね。ウチの(奥様)は料理が好きだったから“ラーメン屋でもやるか”って流れに乗っかって始めちゃった感じですね。もちろんラーメンなんてつくったことないですよ、オレもウチのも。だから、初めてお客さんにラーメン出すときは手が震えましたよ。はっはっは(笑)」

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「アハハ……。そういうことで始められたなら、当初はかなりご苦労もあったんじゃないですか?」

写真永井さん

「それが最初からお客さんが来てくれたですよ。景気の悪い時でも、特に何か変えるわけでもなく、それなりにやって来れました。最初のメニューは、ラーメン、チャーハン、魯肉飯に水餃子。どれも多少日本風にアレンジしていたりもしますが、基本的には本格台湾料理。材料を台湾から取り寄せていたりもするんですよ。営業時間も今と同じで夕方5時から深夜2時くらいまで」

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土地柄、遅い時には夜中12時くらいから急に混み出すなんてこともあるそう。ただ、早い時間帯は家族連れも多いらしい

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「いまメニューは豊富のようですが、だんだん増えていった感じですか?」

写真永井さん

「そうですね。土地柄、飲んだ後に来るお客さんが多くてね。そういう人のために軽めのメニューも用意しているうちに多くなっちゃった。まぁ、ほんとは一軒目に来てもらって、たくさん食べて飲んで欲しいですけど(笑)」

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この通り小皿系のおつまみも充実している

45歳にして出たとこ勝負で台湾料理店をオープン。特に苦労することもなく(?)繁盛店にしてしまった永井夫妻はすごいと言わざるを得ません(というか台湾出身の奥様の料理の腕がすごかったのかも)。

あの有名アーティストもハマる
絶品「担々麺」を実食!

お店のある柳川町。近年では、映画やドラマさらにはミュージシャンなどのプロモーションビデオの撮影地として引っ張りだことなっていますが、なにげに有名芸能人や売れっ子アーティストが来店することもあるのだとか。

常連の某超有名アーティストさんもお気に入りだという担々麺(650円)。

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一般的に知られている担々麺とはまったく違うビジュアル。これ、奥様の出身地である台湾南部のスタイルらしい

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「こんな担々麺はじめて見ました。普通は胡麻ベースのスープだと思うんですが、これ違いますよね?」

写真永井さん

「そうですね。ウチの担々麺はあっさり醤油味。台南の名物料理“坦仔麺(タンツーメン)”にアレンジを加えたものなんです。まぁ、いわゆる“担々麺”とは全く別物ですね」

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具は茹でた青梗菜の上に細切れにした豚肉と台湾の揚げネギを煮込んだタレをかけたもの。しっかり混ぜると具の味がスープに溶け出し、辛みとコクが増すそう

ふーむ、どんな味なのだろうか。早速ですが、食べてみましょう。

本場の味、いただきます!

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ズババババッ

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「ホントにあの担々麺とはまったく別物ですね。スープそのものはすごくサッパリしたタイプ。で、具はラードで炒められているので、割とオイリーなんですけど、青梗菜の柔らかな苦味がアクセントになっていて、なんだかいくらでも食べられちゃいそう」

ここのところ台湾旅行に行く友人が多いんですが、共通して口にするのが「台湾料理は一度食べ始めると腹パンになるまで止まらなくなる」って話なんですよね。その話、今思い出しました。いつもはこの一杯だけで満足できる私ですが、もっと食べたい気も…。

写真永井さん

「じゃあ、“にくどん”でもどうですか」

そう言われて出されたのがこちら。

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台湾料理の定番「魯肉飯(550円)」。通常は“ルーローハン”と読むところだが來來では“にくどん”と呼ぶ。こちらにかかっている油は、担々麺と共通なんだとか。おほっ!うまそう〜!

画像を見て「おや?」と思った方も多いはず、一般的な魯肉飯に載っているのは、甘辛い煮汁で煮込んだ豚バラ肉の細切れ。一方、來來流の魯肉飯は、大ぶりの豚角煮とメンマが載ったダイナミックな一品です。まさに「にくどん」ってネーミングがピッタリ。

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肉!メンマ!ご飯!ときどき担々麺のスープをすすりつつ、ガンガン食い進めます。タレの染みたご飯の美味いこと美味いこと。ちなみに穂先メンマは台湾から取り寄せたもの

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「一般的な魯肉飯より肉食ってる感が強いですね。大量のメンマも現地直送ならではの、ちょっとクセのある風味で、これがまた豚アブラのシミた飯とよく合います。量はそんなにないんで、担々麺とセットで気軽に頼んじゃって欲しいですね。飲んだ後にもさっぱりと食べられるはずです」

あっという間に、担々麺と魯肉飯を平らげてしまいました。本格台湾料理でこころゆくまで腹パンになり感動であります。

店内で威圧感を放つ
謎の大男の正体が判明!
驚きの真実とは?

さてさて、ご主人が「來來」の歴史や料理についてお話ししてくださっている間も、絶品の台湾メシを食べている時も、どうしても視線は厨房にいる“噂の大男”にいってしまいます。

これは強い(確信)

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厨房の中から取材班を伺う噂の大男

それにしてもデカい。ちょっと見た感じ、身長は噂通り190センチ以上、さらに体重も120キロくらいありそう。眼光も鋭く、威圧感もハンパない。これはもう勇気を出して何者なのか聞いてみることにしましょう!

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「あのぉ……随分と体格の良い店員さんがいますよね…。やっぱり酔っ払い対策ですか?用心棒的な」

写真永井さん

「あれですか? 息子ですよ。実は17年間相撲取りをやってて、今年戻ってきたんですよ(すごくうれしそうに)」

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「えええええ!息子さん? しかも元力士?」

写真永井さん

「ええ、“朱鷺ノ若(ときのわか)”って四股名で土俵に上ってました。中学卒業して、15になる前に湊部屋に入って、今32歳。今年の一月場所で引退して、家業を手伝ってくれているんですよ。まぁ、跡継ぎですね」

_人人人人人人人人人人_
> まさかの跡継ぎ様 <
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「食べログに“若い店員が威圧感を放っている”みたいなこと書かれちゃって。そんなつもり全然ないんですけどね」と爽やかな笑顔で語る息子の永井史弥(ながい ふみや)さん。気さくな好青年でした

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壁をよく見ると現役時代の史弥さんの写真が

ナゾの大男は、ほんの1年前まで大相撲の力士として活躍、引退後に帰郷し店を継ぐため修行中の息子さんでした。繁華街の飲食店の用心棒としてこれほど心強い存在はいないでしょうね。しかも、頼もしいことに、息子さんはすでにお料理でも力を発揮しているとか。

写真永井さん

「息子がつくる湊部屋直伝のちゃんこ鍋が美味いんですよ。是非、それも食べていってください」

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「(さっき担々麺と魯肉飯食べて結構お腹いっぱいだけど)いいんですか! それではお言葉に甘えて!」

相撲部屋直伝ちゃんこ鍋は
味もボリュームも半端ない

それでは、元大相撲力士・朱鷺ノ若(ときのわか)こと、來來の跡取り息子・史弥さんによる、モノホンのちゃんこ鍋をご用意いただきました!

それがこちら!

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おうふ……

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おすもうさんをなめてました。食いきれる気しないボリューム。塩ちゃんこ(1人前2000円)。なお写真は3人前。なぜ、3人前…

胃袋には担々麺と魯肉飯がステイ。食欲復活まではまだ時間がかかりそうです。とりあえず時間稼ぎに、話でもしてみましょう。

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「こちらは湊部屋オリジナルという感じなんでしょうか?」

写真永井さん

「基本的にはそうですけど、最近女性のお客さんも多いんで、インスタ映えを意識しつつ、多少アレンジを加えています(笑)。ダシは、ラーメンなんかのスープにも使っている豚ガラがベースですね」

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「力士時代には結構料理をされていたんですか?」

写真永井さん

「部屋によっては『ちゃんこ長』という料理を作る人がいたりもするんですが、湊部屋は完全に当番制でした。しかも入門して10年間は、ちゃんこを作ってくれるマネージャーの方がいたんで、料理をする機会がなかったんです。でも親方が代替わりしたのをきっかけにマネージャーが退職されて、力士だけで料理を作ることになった。ここからが大変でした。最初は文字通りの見よう見まねでしたね。稽古を見にいらっしゃった後援者さんに、初めて料理を出す時なんかはテンパって大変でした(笑)」

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「後援者の方々に変な料理を出すわけにはいかないですもんね」

写真永井さん

「そうですね。だから必死でした。それで頑張って1年くらいで割と上手になりましたね。最初は4人前を作るのにも一苦労でしたけど、すぐに50人前をサクサク作れるようになりました」

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「いやあ本当に美味しそうですよね。いやぁ、それでね最近、大相撲大変じゃないですか。でもね、やっぱり相撲ってのは…(のらりくらり)」

写真永井さん

「あ、そろそろ食べごろですね。お話はまた後でしましょう! どうぞ、召し上がってください(満面の笑みで)」

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「はい…」

さぁ、待ったなし。

制限時間いっぱいです。

はっけよい…

残った!

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こうなったらやっちゃいますよ! もう、オレたちの時代っすよ!

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「まぁ、うまそうだし案外ペロッとイケちゃうんじゃないですかね。だいたいこう言うのって見た目ほど具材入ってなかったり、白菜とかで(事実上の)かさ増ししてたりするし」

立ち会い、そうイキってみた吉田であったが、鍋におたまを差し入れた瞬間、それが実に甘い考えであることを知る。

このちゃんこ鍋、マジで量が半端じゃなかった。史弥さん特製のニンニクと生姜を練り込んだ肉団子の数を数えると30個(1人前10個入り)。そこに厚めに切った県内産の脂が甘〜い豚バラ肉、近所の美味しい豆腐屋さんから仕入れているブ厚い厚揚げ、油揚げ、たっぷりのキノコ類とネギ、人参、大根、ちくわ、ジャガイモなどが、鍋の底までギッチリ詰まっている模様。上げ底感ゼロ。さらに別盛り野菜として、大量のニラ、高崎周辺のみで採れる甘みの強い「国府白菜」、そして忘れちゃいけないシメの炭水化物(雑炊、うどん、中華麺の三種類より選択可能)が控えております。普通の居酒屋で言ったら、余裕で10人前くらいはあります。

「一人前」って「力士一人前」のことかよ!

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「これ、空腹でも食べきれない量ですよ…」と目が点になる吉田

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「ただ、味は最高ですね。サッパリしたスープに具材の出汁が染み出していてメチャメチャ美味い。鍋をかき回してみると、底の方からガッツリとスープを吸い込んだ大根が登場するのですが、これが信じられないくらいバッチリ味が染み込んでる!」

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これだけ美味しい鍋が、食っても食っても無くならない!なんという感動! なんという幸せ!

おすもうさんサイズの鍋ではありますが、史弥さん曰く“野菜が圧倒的に多いんで、実はそんなにカロリーも高くないんです”とのこと。ちなみにこちらのちゃんこ鍋はスタンダードな塩タイプに加えて、にんにく、ごま豆乳、トマト、カレーなどもラインナップ。

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後半は辛味ダレで味に変化をつけるとなおよし。たくさん食べさせる工夫が凝らされてますねえ。実に相撲飯っぽい。ちなみにご飯にかけても美味しいらしいです

お腹いっぱいだけど、あまりの美味さに箸を止めることが出来ないライター吉田と絶メシ調査隊。おそるべし相撲飯!おそるべし史弥さん! すべて食べきることはできませんでしたが「残す人ばっかりなんで、大丈夫ですよ」と、優しく許してくれた史弥さん。残す人が多いのは納得ですよ…でも、ホント美味いから、残しちまうのは悔しいんですよね。

ちなみに來來には、2時間の飲み放題コース(1500円。生ビール付きは2000円)もあり。たったの4000円で元力士が作る極上ちゃんこを腹パンになるまで食いつつ、ベロベロに酔っ払うことが出来るのです! 最高ですね!

後継者問題をクリアした
新生「來來」の今後

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“看板猫”と店前で戯れる史弥さん。路地裏のネコと元力士。絵になります

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「担々麺も魯肉飯もちゃんこも全部美味しかったです!」

写真永井さん

「ウチは古いだけの店だけど、いつでも一生懸命だからね。夕方早い時間から深夜まで真面目にやってるし、味だって少しでも美味しくしようと妻とオレと息子、3人で頑張ってますよ」

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「息子さんが帰って来てくれたのは嬉しいですよねえ」

写真永井さん

「ええ。オレも76になったけど、これで安心ですよ。息子の現役時代は本当に心配が尽きなかった。三段目の優勝戦で脳震盪かなんかで倒れちゃって、その時は本当に不安でしたね」

写真永井さん

「ボクは本当に怪我が多くて。右膝は一回手術して、両足首もやってますね。左手首は二回手術してます。そのほかに脱臼や骨折が…まあ“いっぱい”です(苦笑)」

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「厳しい世界ですねえ」

写真永井さん

「トレーナーの人も『一番ごとに交通事故に遭ってるようなもんだ』って言ってましたね。怪我しないなんてありえない世界ですよ」

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「大相撲って謎の多い世界じゃないですか。引退した今だから話せることなんかも多そうですね」

写真永井さん

「まあボクは引退した人間なんでね。店に来て聞いてくだされば、あくまで話せる範囲で」

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史弥さんの相撲トークが聞けるのは「來來」だけ!

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「今更ですけど、史弥さん、來來を継ぐことはいつ決めたんですか?」

写真永井さん

「引退間際ですよ。昔は父も“好きなことやれ”って言ってたんですけど、年月を重ねるうちに店に愛着が出てきたらしくて。僕の引退間際には、“店を継いで欲しい”という空気をバリバリ出してくるようになってたんです(笑)。まあ両親の仕事が大変だというのも知っていたんで、僕自身も徐々に実家を手伝いたいなって思うようになっていってましたけど」

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「“絶対になくしてはいけないもの”という思いが、ご両親にも史弥さんにも芽生えたということですよね。いずれにせよ若旦那の帰郷、ちゃんこ鍋の導入、來來に新時代が到来した感があります。今後の展開は?」

写真永井さん

「まずは両親に迷惑をかけないように頑張っていきたいですね。まだお店にあるメニューを半分もマスターしてないですから。今は餃子、ワンタンは作ってます。あとチャーハンですね。とにかく今は店のメニューを覚えること。そのうち余裕ができたら、僕なりに新メニューも考えたいですけどね」

自分が作った料理を「美味しい」って言ってもらえるのは本当に嬉しい、と語る史弥さん。その表情はかつて土俵上で見せていた勝負師の顔とは違った、柔和で穏やかなものでした。そしてその様子をこれまた優しい表情で見守る、お父さんとお母さんの姿も印象的でした。

余談ですが、史弥さんは未婚かつ彼女募集中とのこと。「我こそは!」という方はお店に足を運んでみてはいかがでしょうか!32歳とお年頃の史弥さんにどこまでガブリ寄れるか、それはあなた次第です!

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取材・文/吉田大
撮影/今井裕治

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