焼きまんじゅうの老舗オリタ

No.14

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タレもトークも超濃厚!
焼きまんじゅうの老舗ですごす至福の時間

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「オリタ」は、高崎の名物・焼きまんじゅうの名店だ。ここの焼きまんじゅうは、中はしっとり、外はカリカリ。もちろんおこげ付きである。そこにビックリするほど濃厚なタレをたっぷりかけ、思い切りかぶりつく。

そんなオリタの焼きまんじゅうにハマった人は数知れず。「一度食べたら忘れられない」ということで、過去には海外在住者から注文も入ったほどなのだとか。

たかが焼きまんじゅう。されど焼きまんじゅう。人々をトリコにする、魅惑のオリタ流焼きまんじゅうに迫る。

(取材/絶メシ調査隊 ライター田代くるみ)

焼きまんじゅうのタレ並みに
超高濃度なお母さんが最高

写真ライター田代

「みなさんごきげんよう、絶メシ調査隊の田代です。九州の宮崎出身で、普段は東京でライターのお仕事をしています。まずここで大事なお知らせなのですが、田代は高崎のことをまったくわかっていません。私の知りうる高崎の情報は『群馬県にある』ということと、『夏がものすごく暑い』という2点のみです。はい、本当にすみません。しかし! この世に存在する絶メシを死守したい熱い想いはございます。守りたい、この笑顔! 守りたい、この絶メシ!ということで、今回は焼きまんじゅうの『オリタ』さんに伺います」

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レトロなのれんが絶メシ感を演出している。最初右の看板を「焼まじんゆう」と読んで頭が大混乱したのはここだけの話

写真ライター田代

「田代は『高崎』という項目に関しては偏差値が3ほどしかないので、もちろん焼きまんじゅうも未体験。見たこともありません。え~っと、まんじゅうを…焼いたやつ…? よく分からないのですが、とにかくお店に行ってみましょう。ごめんくださ~い!」

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出迎えてくださった二代目店主の武田利子さん

写真二代目 武田さん

「はい、いらっしゃい。それで、今日は取材なのよね? アナタが取材する人ね。はい、よろしく。あ、そういえばこの前、取材でJOY君(※高崎出身のタレント)が来てくれたのよ。いや~、かっこよかった! もう気分アガっちゃってしょうがなかったわぁ。私ね、そんじょそこらの人じゃアガらないけど、あれはアガったわ。うん、それくらいJOY君はイイ男よ、本当に。だってJOY君ね…」

来店早々、武田さんのマシンガントーク炸裂。この後も彼女の濃厚なJOYトークは続いたが、スペースの関係上、割愛(失礼)させていていただく。

焼きまんじゅうを食べたことがない?
話にならん!

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取材中、お客さんから注文電話をとる武田さん

武田さんのトーク力はすごい。引き出しの数、展開力、的確なツッコミ。もう食べる前からお腹いっぱいになりそうなほどだ。しかしただ闇雲に喋っているだけではない。様子を伺うように、ちょいちょい焼きまんじゅうに関する質問を繰り出してくるのだ。「おまえさん、どんな焼きまんじゅうを食べてきたんだい」と言わんばかりに。その眼差しはするどい。

しかしライター田代、焼きまんじゅう未体験につき、なにも答えられずにいると……。

写真二代目 武田さん

「あなたたち、どこの人? 高崎?」

写真ライター田代

「いえ、私は出身は九州・宮崎で、今は東京で生活しています」

写真二代目 武田さん

「ふ~ん…。あなた、焼きまんじゅうは食べたことあるわよね?」

写真ライター田代

「あ……ない、です」

写真二代目 武田さん

「そりゃ話にならないわ」

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田代のド素人発言にこの表情の武田さん

写真ライター田代

「ふぐう…すいません」

写真二代目 武田さん

「ま、いいわ。私が本物の焼きまんじゅうを食べさせてあげるから」

一瞬、その場に緊張感が走ったが、武田さんはそう言うと、すばやく“焼き場”に立ち、まんじゅうを竹串に刺し、丁寧に焼き始めた

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じっくりと両面を焼いていく

写真二代目 武田さん

「うちのおまんじゅうはね、まず生地は小麦粉ともち米。それで、タレは赤味噌とお砂糖なんだけど、レシピは企業秘密だからナイショよ。無添加なのがこだわりで、これは創業した69年前から同じ作り方。創業した時、お店は今のお店の3軒くらい隣にあってね、先代のおじいちゃんがやってたの。その頃は焼きそばとかおでんも一緒にやってたんだけど、私が店を引き継いで、今の場所に移ってからは焼きまんじゅうだけ。最初は焼きそばもやってたけど、注文もらってから作り始めると時間がかかっちゃうから、もう焼きまんじゅう一本にしたのよ」

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焼きながら薄めにタレを塗っていくのがポイントなんだそう

写真ライター田代

「もう69年もやってるんですか…歴史がすごいなぁ。どんなお客さんが買いに来るんですか」

写真二代目 武田さん

「そりゃ、いろんな人が来るわよ。この前も焼きまんじゅう博士が来てね。いろんなところの焼きまんじゅうを食べ歩いてるのよ。うちにもフラッとたまに来てくれるの。焼きまんじゅうのことなら、日本で一番詳しいんじゃないかしら。その人がうちのお店を紹介してくれて、それを見て買いに来てくれた人もいるわ。ありがたい話ね」

写真ライター田代

「ほえ~、いいお客さんですね」

写真二代目 武田さん

「でも、いいお客さんばっかりじゃないわよ。嫌なお客さんもいっぱい。ちょっと前に、おまんじゅうを買って支払いの時に『10円まけてくれ』って言うお客さんがいてね。10円よ? うちのおまんじゅうは170円で売ってるから、10円も大事な利益なのに。いやな人でしょ。もう2度と来てほしくないわね。それにね、この前は店の前でずっと自転車でうろうろしている老人が……(省略)。あとね、随分前に若い男の子でうちによく来る子がいたんだけど、その子がまた遠慮がなくて……(自主規制)」

写真ライター田代

「お母さん、嫌なお客さんのエピソードの方が圧倒的に分量多いってどういうことですか」

焼きまんじゅうは一瞬一瞬が勝負
焼けたらすぐに食え、が鉄則

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酷暑の高崎。ノーエアコンでの取材は危険

取材したのは8月の猛暑日。にも関わらず、エアコンもかけず、床に置かれた扇風機もオフのまま。しかし、武田さんは汗を流しながらまんじゅうを焼き続ける。

そして出来上がったあっつあつのおまんじゅうがこちらだ。

う、うまそう。

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まんじゅうが焼けたら、最後にスプーンで思い切り超濃厚なタレをかけるのがオリタ流

写真二代目 武田さん

「うちはね、こうやってタレをたっぷりかけるのがこだわりなの。ケチケチしないで、こう、ドバッとスプーンでいく。こんなかけてるのはうちのお店だけじゃないかしら?」

あまりにうまそうなので、もう一枚。

THE 濃厚

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手前があんこなしの170円、奥があんこ入りの180円

写真ライター田代

「香ばしいかおりがしますね。しかも思ったよりもボリューミー。これはあん入りからいただくべきか、あんなしからいただくべきか悩みますね…」

写真二代目 武田さん

「はいはい、あなたのコメントはいらないから、早く食べて。おまんじゅうはとにかく焼きたてじゃなきゃダメ。冷めたおまんじゅうとか最悪だからね。まずは竹串を外して、お箸で一つひとつ切り離すの。はい、早く食べて。早く!

それではいただきます。

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「とにかく早く食え」と急かされる田代。このカットを撮っていた時も、武田さんは一刻も早く食べて欲しそうであった

いくでー!!

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いった−!!

写真ライター田代

「最高にうまい…甘辛いタレにおこげの香ばしさ、中はモッチモチだ…なんで私は28年間も焼きまんじゅうを知らずに生きて来たのだろう。もっと早く出会いたかった…」

写真二代目 武田さん

「美味しいでしょう? 焼きまんじゅうは上品に食べるもんじゃないから、おまんじゅうを口に持っていくんじゃなくて、顔をおまんじゅうに寄せて食べるのよ。それで、口の周りをタレまみれにしながら頬張る。これが一番おいしい食べ方ね」

写真ライター田代

「豪快に行くのがイイっ! いやぁ、マジで美味かった…オリタさんの焼きまんじゅうは後世に残すべき文化遺産です」

写真二代目 武田さん

「そりゃどうもありがとう。でも、うちはもう私の代で店閉めちゃうからね」

写真ライター田代

「えっ!?」

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こんな素敵なお店がなくなっちゃうの?

写真二代目 武田さん

「私は子どももいないから、継がせる人がいないし」

写真ライター田代

「そっかぁ…お店を閉める時期は決まってるんですか」

写真二代目 武田さん

「まぁ、いつ店を閉めるかはまだ考えてないね。先代も病気になるまで店をやったんだけど、私だっていつ体にガタが来るか分からないでしょ。だから、自分が元気なうちはやるけど、病気になっちゃったらもうやめる

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こちら若かりし頃の武田さん。色白で超美人だし馬に乗ってるしテレフォンカードにしちゃってるし

写真ライター田代

「でもこんなに美味しい焼きまんじゅうなら自分が継ぎたいって手をあげる人もいるんじゃないですか?

写真二代目 武田さん

「昔、友達に『継ぎたい』って人がいたのよ。でもその彼女、太りすぎて病気になっちゃってね。今は後継者のメドは無し。もし継ぎたい人が出て来たら…まぁ、その時はその時で考えるわ

写真ライター田代

「いや、オリタさんは本当に続いて欲しい。焼きまんじゅうがこんなに美味しいなんて感動しましたし、お母さんのキャラが最高。忘れられないよ」

写真二代目 武田さん

「ふふ、ありがと。まぁね、先のことは分からないからね。また近くに寄ったら食べにおいでよ。待ってるからさ」

超濃厚なタレがたっぷりかかったまんじゅうと、これまた超濃厚なキャラクターのお母さんからなる、高崎の焼きまんじゅうの老舗・オリタ。焼きまんじゅうが美味いことはもちろんだが、何よりお母さんと話せば話すほど「もっと仲良くなりたい」と思ってしまうのが不思議で、それがきっとオリタさんがずっと愛されている所以なのかもしれない。

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取材・文/田代くるみ
撮影/今井裕治

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