クセ強めのレストランで
絶品の風船ハンバーグと
バブルの残り香を味わう
クセ強めのレストランで
絶品の風船ハンバーグと
バブルの残り香を味わう
80年代初頭、田園風景が広がる高崎郊外に突如として現れたシャレオツなレストラン。80年代の半ばには、バブル景気に全力で浮かれまくる高崎ヤングメンからデートスポットとして愛されていたという。オープンから35年超。あの時代の残り香を求めて、絶メシ調査隊が出動した。
(取材/絶メシ調査隊 ライター吉田大)
「バブル景気の恩恵は全く受けていないですが、映画やら漫画を通じて、そのキラキラ&フワフワ感は知っている(つもりになっている)ライター吉田です。バブルといえば、ギロッポンをビーエムでワンレンと流した後にイタメシからのマハラジャ的なアレですよね(雑)。そんなギロッポンからも遠く離れたここ高崎にもバブルの波は届いてようで、当時の高崎で『最もナウいデート&ナイトスポット』として愛されていたのが、今回紹介する洋食レストラン『SR-50』なのです」
ということで、今回ライター吉田率いる絶メシ調査隊が意気揚々と現場に到着。「SR-50」という若干トリッキーなネーミングからして、外観からキテるだろうとは思っていたが……
ロードサイドで一際目立つ
モダンな建物がドーン!
続いてお店の横に回ると…
思い切り傾いた巨大看板がバーン
そして店の上部分には、
これまたクセ強めの看板
「バブルというより、アメリカンというか、宇宙的というか。とにかく店主のこだわりが強そうなお店であることは間違いないようです。では、不安でいっぱいですが、早速入店してみましょう」
お二人によれば、そもそも「SR-50」がオープンしたのはバブル前夜の1983年。オーナーシェフの尚司さんは神奈川県川崎市のご出身で、高校卒業後は川崎市内の老舗洋食屋さんで修行されていたそうなんですが…。
YOUはどうして高崎に?
ところが父上はある時、気づいてしまう。
「高崎の郊外で蕎麦屋をやっても経営が成り立たないのでは」
店舗付近の人口密度がメチャ高&出前注文がひっきりなしだった川崎時代と異なり、新店舗の建設予定地は畑のド真ん中。家と家の距離も離れており、出前商売には全く向いていなかったのだ。
そんな時、吉田家の前にある人物が現れる。
その人物とは、
バブル前夜の東京でブイブイいわせていた(らしい)
売れっ子空間プロデューサーのK氏
(偏見かもしれないが、すでに肩書があやしい)
「ナプキンに描かれた一枚絵で決めちゃうところが、すごいですね。そもそも、不動産屋さんのご紹介とはいえ、東京でブイブイ言わせていたボロボロGパン&赤シャツという空間プロデューサーが言うことを、なぜそこまで信用できたんですか(←どストレートに失礼なことを聞く吉田)」
「外観からして相当インパクトがありましたが、Kさんのフッと湧いたアイデアが形になり、こうして35年以上も店が続いているわけだから、すごい話ですよね。ちなみに外に掲げられていた看板も、その方の仕業ですか?」
「SRはスーパーレストランの略でしたか! 宇宙船っぽい店の雰囲気も納得です。ちなみにSR50の50はどこから来た数字なのでしょうか?」
「店主本人が店名の意味を全把握していないって! ちなみに今もKさんとの交流は続いているんでしょうか?」
「えっ…」
「高崎じゃなくても受け入れてもらえなかったと思います」
「意外にも、といっては失礼ですが上品な味です。ハンバーグから流れ出た濃厚な肉汁がトマト&コンソメソースと絡んで非常に厚みのある味わいを生み出しているんですね。このソースを迎撃するのが、ハンバーグの上に大量に盛られたチーズ。トマトの酸味、肉汁とコンソメの旨味、濃厚チーズの波状攻撃。これはもう間違いないバランスです。さっき、隣のテーブルで地元の女性がパーティーを開いてたんですが、全員このトマトソースのハンバーグを召し上がっていました。マジで定番。まさに看板」
「熟成肉ステーキ」かつ「限定」にもかかわらず1280円という価格。
さらに「200円で100 g増量」できるというジャンプアップ制度も気になる。
しかもスープ、サラダ、パンが食べ放題でドリンクバー、ライス付きのお値段とのこと。500gにしたい場合、1880円という計算になるが、某いきなり系ステーキ店のランチが450g/1,850円であることを考えると、これは相当お得である。ってことで、今回は特別に1ポンド(約450 g) をオーダー(※普段は100グラム単位でのオーダーのみ)。
いきなり、ではなく
やまなり!ステーキ
インサート撮影のため、数十秒のウェイティングに苛立つ吉田。
早く食べたいがあまり、目が血走ってきたので……
そろそろパクついてちょーだい!
「口の中をアミノ酸が駆け巡りますね。ご主人が丹精込めて熟成させたお肉は、タンパク質が分解されることで柔らかくなり、同時に酵素によって旨味成分がマシマシになっております。今回はサシが少なくいためヘルシーで、なおかつ肉質が柔らかい『サガリ』と呼ばれる部位を使っていますが、タイミングによっては肩ロースも使ったりもするらしいんで、肉の部位や柔らかさを聞いてから注文してみてください」
と、言うわけで看板メニューであるハンバーグとご主人が「採算度外視の客寄せメニュー」と語る熟成肉ステーキを完食した吉田であったが、実はこの店には、もう一つ人気メニューがあるという。由美子夫人が手がける自家製パンだ。これが美味いだけでなく、コスパ感もMAXなのである。
「ここだけの話、なんとこの店で料理を頼めば、食パン、惣菜パンから菓子パンまで、すべてのパンが食べ放題になるそうです。料理とともにプレーンなパンをいただき、更にお惣菜パンで満腹になったら、デザートとしてスイーツパンを食べる。もう低炭水化物ダイエットって何よ? 状態です。汗が止まりません」
そんなこんなで時は流れ、デザイナーK氏によるインパクト重視のアイデアが詰まったSR-50も、いつの間にやら老舗の仲間入り。バブル崩壊やらリーマンショックやらで、イマイチな状態に陥ったこともあるらしいが、そのたびに両親譲りのハードワークで乗り切ってきたそう。聞けば現在も完全オフは大晦日と元旦のみ。
一体何でそんなに働いちゃうの?
「休みの日って、ものすごく長く感じられるんですよ。キツいといえばキツいんだけど、休むと逆に体の調子が悪くなる(笑)。本音を言えば、年末年始も開けたいくらい」
「常連さんと会うのも楽しいからね。もちろん距離を保ちつつ通い続けてくれているお客さんも多いですが、頻繁に会ってるうちに家族みたいになっているお客さんも結構いるんです。『結婚の保証人になってくれ』って言われた時は驚いたけど、本当に嬉しかったですね。単なる飲食店としてではなく、私たちという人間を受け入れてくださっている感じがしました」
「家族みたいなお客さんも結構いるなんて、めちゃくちゃ素敵な話ですね」
ちなみにこちら、家族のようなお客さまが自主制作したCD。
店頭で販売しているという。
「跡継ぎはいないそうですが、そうした常連さんから、店を継続してほしいという声も届くんじゃないですか」
「まぁそうですね。冗談半分ではありますが『店をやりたい』って言ってくれる方もいるんですよ」
「へー、それもいい話ですね。ちなみに跡継ぎに求める条件はあったりしますか? 例えばレシピを継いで欲しい、とか」
「味を守ってほしいという気持ちはあるし、『教えてくれ』って言われりゃ教えますよ。でもね、私達と同じことをやらなくたっていい。それよりも自分の味を見つけるってことが大事なんだと思う。あとはとにかく楽しんでやれる人。楽しくなきゃ、こんな商売は続けられませんから。私達だって、なんだかんだ『楽しいな』って思う瞬間があるから、この店を続けることが出来てるんです」
「とにかく楽しんで続けていきたいよね。両親は70過ぎまで働いていたので、私たちもそれぐらいの歳までは頑張りたい。まずは開業50周年を目指してあと15年はやりますよ(断言)」
バブル全盛期は、高崎の石田純一や前橋のW浅野たちが夜な夜なハイソカーで集い、大いに盛り上がりまくっていたというSR-50。あれから35年超。イケイケでピカピカだった時代と比べれば、たしかに「華やかさ」は失われてしまったかもしれない。しかしインパクト勝負のバブリーレストランは、夫妻のたゆまぬ努力により、味わいたっぷりの老舗洋食レストランへと成長。そんなSR-50に、是非とも足を運んで、その旨味を堪能してみてほしい。そしてKさん! この記事を読んだら、吉田夫妻にご一報ください!
取材・文/吉田大
撮影/今井裕治
No.53
SR-50(えすあーる ごじゅう)
027-352-4145
11:00〜24:00
【ランチ】 11:00~15:00 【ディナー】18:00~24:00(月〜金L.O22:30/土L.O23:00)
火曜はランチ営業のみ
群馬県高崎市中居町2丁目4−22
倉賀野駅から2,500m
絶メシ店をご利用の皆さまへ
絶メシ店によっては、日によって営業時間が前後したり、定休日以外もお休みしたりすることもございます。
そんな時でも温かく見守っていただき、また別の機会に足をお運びいただけますと幸いです。